ビールとワインの家族旅行

もう11月ですが、夏に家族で旅行に行った時の思い出を少し。
家族旅行といっても、息子さんは勉強合宿のため不参加。これは意地悪ではなく、「家族旅行なんて行ってられるかよ」という高校生男子の心を酌んだ旅程なのです。柚木が宿を手配する以上、もちろんそれは貧乏旅行になる。だから新幹線とかには乗らないわけです、無論。柚木、だんなさん、両親、弟の計5人で、黒のインプレッサにぎゅっと乗り込み、2泊3日の旅へ出発しました。家族一番のちびっこである柚木の指定席は、後部座席の真ん中です。これはね、実際のところかなりしんどかった。インプレッサの後部中央はちょっとU字型に盛り上がっていて、お尻がきちんと納まってくれないのだ。山道をぐるぐる走ったあとは、お尻まで筋肉痛になった。ドライバーさんの苦労を思うと、あまり文句は言えないんだけれど。
今回の旅の目的は、「世界遺産に登録された富士山を眺める」である。あまりに近づくと混んでいそうだし、登るのは大変過ぎる。
観光のスタートは富士山の雪解け水が湧き出ているという忍野八海(オシノハッカイ)から。山梨県に入ってもあいにくの曇り空、富士山の中腹から上は厚い雲の向こうに隠れて少しも見えない。でも雨は降らないし、観光客もたくさんいて、気分もだんだん盛り上がってくる。
今回の旅の食事は、(飛騨高山の町で食べた夜ご飯を除けば)どれも大変に美味しかった。初日のお昼も、記憶に残る味だった。「シルバンズ」は地ビールが自慢のお店で、ビールと同じくらい食事が美味しい。ここでは日本では珍しい燻煙ビール「ラオホ」が飲める。鰹節のビール、とうちでは呼んでいる。
クセが強いのだけれど、不思議と食事に合うのだ。
そのままほろ酔い気分で鳴沢氷穴富岳風穴を体験する。この二つのトンネル式になった洞窟は、今から1130年以上前の貞観6年(864)富士山の側火山長尾山の噴火の際、古い寄生火山の間を灼熱に焼けた溶岩流(青木ヶ原丸尾)が流れ下ってできたそうだ。氷穴なんてまさに巨大遊園地の冒険アトラクションそのもの。続けて2周して、ちょっと息切れしてしまった。
二日目は朝から晴れ間も覗き、ホテルから富士山が頂上まできれいに見えた。写真で見慣れた姿とは違い、山頂に白く積もる雪はない。
雪がないと、ただの高くてちょっと雄大な普通の山みたいだ。でも本栖湖から「千円札の富士」も見たし、これで一応旅の第一の目的は達成である。
武田神社(御祭神は武田信玄公)を見学し、小さなワイナリーに移動。自分たちでパチパチ電気をつけながら勝手に内部を見学する。 柚木にはワインの知識は何もないけれど、心を込めて作っているのが伝わってくる素敵なワイナリーだった。試飲コーナーにも、わたしたちの他には数人の客しかいない。中に、リュックを背負って駅から40分かけて歩いてきたという男の人がいた。「わたし、こういう者ですが」とカウンター内の男性職員に名刺を差し出している。雑誌記者か何かと思ったら、どうやらブログを書く人らしい。クセのある言動に、ついつい耳目を惹かれてしまう。残念ながら、彼自身が思っているほどには、ワインに対する造詣は深くなさそうである。テイスティングの時に、グラスを机の上で高速回転させる姿はぜひ動画に残しておきたかった。格闘ゲームでボタンを連打する名人のような見事な回転だったのだ。きっと、たくさん練習したのだろうと思う。
別のワイナリーに寄りランチ。 その後一路、飛騨高山へ。(ここでの夜ご飯は高いだけではずれだったので、記憶から消去)夜は大浴場が自慢のホテルに宿泊。翌朝、千光寺の円空仏寺宝館に出かけた。円空仏が見れるというのに、ガイドブックには載っていない。ネットで検索してもあまり情報が得られない。これは怪しいところに違いない。しかも車で、どんどん山道を登っていかなければいけない。そんな訳で少しも気が進まなかったのだけれど、弟くんの粘りに負けて行くことになってしまったのだ。ところが実際行ってみると、ここは大変に素敵なところだった。(両面宿儺像リョウメンスクナゾウが特に気に入りました)ガイドブックに載っていないからって、怪しんではいけないのである。
高山の町はとてもこじんまりとしていて、くるっと半時間も歩くと観光は終了してしまう。何故か高山陣屋を熱心に見学したのだけれど、町並については(京都から来ているせいか)それほど見所があるようには思えなかった。ランチはメインストリートからはほんの少し外れたところにある「穂月」という店でとった。ここの食事は文句なしに美味しかったので、飛騨高山に御用がある方にはお薦めです。(というか、他にはあまりいい思い出はない)
旅行最後の締めは、世界遺産に登録されている白川郷
柚木が学生だった20年近く前には、まだ世界遺産登録を目指している段階で、しっとりと雨の振る午後に訪れたせいか観光客の姿もまばらで、遠い昔に忘れられた遊園地みたいにうら寂しい印象ばかりが残る場所だった。なのに、今では観光バス数十台、乗用車100台以上をも余裕で収容できる巨大駐車場が完備され、合掌造りの土産物屋やカフェが集落のあちこちに点在する一大観光スポットと化していた。日本人観光客だけでなく、台湾からの団体客なんかもぞろぞろ歩いている。あまりの変わりっぷりに、びっくりしてしまった。世界遺産に認定されるって、ほんと大事ですね。