息子、リップサービスする

 平日の午後3時頃、毎日玄関のドアをうるさく叩く音がする。ドン、ドン、ドドン!「おかえり、かわいいひと!」とわたしはドアを開ける。かわいい人の正体は、わたしの愚息です。(しかし、愚息ってすごい表現ですね。どうも好きになれない)。9歳の彼は「かわいいひと!」とゆわれ、頭にチュウされます。毎日、必ず。
“My sweety! Welcome back.” and big smack!!ってアメリカ人がやっててもあまり違和感はない気がする。でも、のっぺり顔の純日本人がこんな調子なのは、一般的日本人の母親としてどうなんでしょう? わたしにはよく分からない。だいいち『一般的日本人の母親』ってどんなのだ? なんだか漠然としている。ほんとによく分からない。
 息子は小学校3年生の男子なので、この習慣にはちょっと迷惑している。友達の前でやられたりしたら、男として、格好とゆうものがつかない。(もちろんわたしだって自重している。でも、無意識の動作には責任が持てない)。メンツが丸つぶれである。小学校3年生の男子にだって、それなりの立場ってものがあるのだ。でも、彼は慣れている(なんせ生まれた時からそんな調子なのだ。少し前は『(ママの)大好きさん!』と呼ばれていた)。だから、まぁそんなに抵抗はしない。母は「まぁいいか」と思い、この習慣は今しばらく続くことになる……。まぁ、それもまた運命です。ある種の。諦めてもらうしかない。