COOL−BIZ 夏の軽装

 霞ヶ関発信の話題としては久しぶりに(ほんとに前にもあったかは分からない)諸手を挙げて賛成したいこの*1『COOL-BIZ』、無事に定着してくれるのかだけが心配です。だけど前に羽田元首相が提案していた奇妙な『省エネルック』よりは随分と洗練されていて受け入れやすいし、今度は政府内部にも賛同者が多く実現に向けた熱意が感じられるから期待できるんじゃないかな。
 軽装化、つまりノーネクタイ・ノージャケットにすることについては仕事の相手先に対するイメージの悪化を心配する声も強いみたいだけど、「そんなの馬鹿げてる」と会社勤めの経験のないわたしなんかは思う。もちろんTPOという言葉をわたしは知っているし、葬式にピンクの服を着てくる人間や結婚式に墨色のネクタイを締める人間に寛容であることは出来ない。でも、本当に汗でぐっしょりと張り付いたシャツをスーツの下に隠してビジネスの話をすることが礼儀にかなったことなんだろうか? スーツの脇を汗で一段濃い色に染め、額に大粒の汗を噴き出している人を見るのは個人的にはとても不快である。だいいちそれは彼の健康によいとは思えない。それに彼らのために冷房が強められると半袖のわたしは寒くて堪らないのだ。真夏に寒さに震えなきゃならないなんてどう考えたって馬鹿げてる。そう思いませんか? 
 何が礼儀にかなった服装かなんてことは、それぞれの時代に生きる人間の認識によって大きく変化する。百年前にスーツなんて着てたらきっと「ちょっと頭のおかしい人間」だと思われたはずだ。そんなに遡らなくても十年前に営業マンが髪を茶色く染めることは今ほど気楽に許されてはいなかったと思う。世間の常識なんて所詮はその程度のものなのだ。無理にへばり付いて護らなくてはならないほどたいしたものではないはずだ。それは脆くて容易に移ろう、その善悪ににかかわらず  。ならどうして地球の未来のためにそれを動かすことが出来ないっていうんだろう?
 結局軽装化に疑義を抱く人たちは比較すべき対象を誤っているのだとわたしは思う。比較すべきなのは「電気代節約と礼儀」ではなく「地球の未来と束の間の些細な違和感」なのだ。『COOL-BIZ』こそが夏の礼儀にかなった服装であると脳に刷り込み直せば実に容易に問題は解決する。人間の適応能力は馬鹿にしたものではないから、それほど難しいことだとは思わない。
 この先この新たな試みがうまく定着してくれれば、個人的に日本のことを少し自慢に思える気がする。環境問題に真剣に取り組んでるし、それほど頭が固い国民でもないんだぞってね。だから日本のサラリーマンのみなさん、ぜひ頑張ってください。