NEWS SCRAP その3

 昨日いつものようにニュースJAPANを眺めていたら心暖まるとは言えない(一応れっきとした犯罪なんだからそんなこと言ったら怒られちゃう)けれど、ふぅっと肩の力が抜けちゃうような事件が報道された。たぶん近畿のローカルニュースだし今朝の朝日新聞にも記事を(パラッとめくった限りでは)見つけられなかったから目にしてない人の方が多いと思う。
 事件としてそれは複雑なところはなにもない。「連続窃盗犯が捕まった」というだけのことである。でも「連続」窃盗事件であることがこのニュースに占める比重はあまり大きくはない。この事件が小さいながらもニュースとして成立し得たのは、ひとえに彼が自己の犯行記録を詳細なメモに残していたことにある。家宅捜索の結果、被疑者の自宅から犯行の日時や場所・盗んだ金額などを記したメモと被害者のキャッシュカードなどが発見されたのだ。
 これは警察にとってかなりのラッキーであっただろうと想像する。見付けた瞬間に少しくらい踊っちゃったりしたのではなかろうか? あるいは口笛くらいは吹いたのではないだろうか。なんせ供述を得るのは楽だし正確性も担保されている。それは検察官にとっても同様だ。犯行記録の残されたこの種の公判維持はすごく楽そうである。もちろんこれは想像に過ぎないから、そこには何か特有の困難が存在するのかもしれないけれど。
 世の中には自己に不利益になることを知りながらこの種の記録をつけずにはいられない人間がいるのだ。(前にもたしか同じように被害女性の特徴まで詳しく記録していた大学生の連続強姦魔がいた。これなんて事件の性質上告訴することが出来ない女性も多いだろうし、メモさえなければ発覚すらしなかった事件も多いと思う)。それは公開予定のない日記をつけたり不倫メールをきちんと削除しないことにどこか似ている。それは変えがたい習慣であり誰にも見られることがないという楽観なのだ……、わたしはそんなことを考えた。
 でも実はこの考えは全くの的はずれだったんですね。ニュースの続きを聞いて思わず「なんじゃそりゃ!」と声に出しちゃったくらいだ。つまり彼はある意味わたしが想像したのとは真逆の動機、すなわち「自己の利益のため」に犯行メモを書き始めたのである。彼は『以前捕まった時に余罪を思い出すのに苦労したから』その困難を避けるために、また『他人の犯行を押し付けられるのが嫌だったから』その危険を避け自己と他人の犯行とを厳然と区別するためにメモを残したのだ。確かにこれは捕まることを前提に考えればよく理解できる。単純に考えて犯行を重ねていけばそれだけ捕まる危険性も高まるし、いざというときに備えるのは危機管理の姿勢として非常に正しい。目から鱗である。でも……、なら盗みなんてやめときゃいいのにと思っちゃいますよね。
 こんな三面記事的ニュースには何か人を和ませてくれる要素がある。もちろん被害者の人のことは素直に気の毒だと思うし、その犯人の相反する行動に感じるある種のおかしさによって罪が軽くなるものとは思わないけれど。
《追記》
 『週刊エキサイト』http://media.excite.co.jp/News/weekly/040113/odd_p02.html
 検索したらこれしか出てこなかった。でもこの事件は一月六日に記事となっている。わたしがこのニュースを見たのは昨日のことだから、起訴されたとの報道を聞き違えたのか(その可能性もないとはいえない)たんに同種の事件が定期的に発生しているのか(それも十分に考え得る)……。ちょっとキツネにつままれたみたいな気がする。まぁどうでもいい事件だけれどね。