スペースシップは場所をとる

 え〜っと、今日は村上モトクラシ第10回大調査についての回答を。明日には第11回大調査が始まるというのに……。まぁいいや、今はまだ第10回だもの。 
 http://d.hatena.ne.jp/motokurashi/20050621 

村上モトクラシ大調査】1・「村上モトクラシ」トップページの魚を捕まえると、「『海辺のカフカ』各国版表紙デザインミュージアム」が現れて『海辺のカフカ』海外版の表紙画像が見られます。今回見られる装丁6種類の中で、どれが一番好きですか?
韓国 63
台湾 49
香港 101
中国 42
ロシア 182
ドイツ 563

 これは『海辺のカフカ』を読む前に回答した。だから純粋に表紙を見て選ぶ。わたしの答えは「台湾」。これも立派な少数派なんだけど、実際に読んだ今は「中国」のがなかなか良いんじゃないか? と思って数字をよく見たら、それこそが真の少数派だった。――みなさん『海辺のカフカ』をきちんと読んでから選びましたか? 自分が少数派であることを認めたくないわけじゃないのだけど……。
 まず「韓国版」。これは特に下巻のエメラルドグリーンがきつく感じたので何となく違う、と判断。でもこれが一番日本版に忠実らしいことに、実際日本版を手にしてから気が付いた。ネット上の画像は少年の白いシルエットが飛んでしまっていて、よく分からなかったのだ。
「台湾版」はちょっと昔の推理小説を感じさせる。たとえば江戸川乱歩だとか。読んだ後でもなかなか悪くない選択だったんではないかと思う、個人的少数派の意見としては。
 純粋に表紙の好みで言うならば「香港版」がいいな、と思った。不思議な世界を冒険する絵本みたいな感じだ。上下巻で絵が連続しているのもすごく素敵である。でも少年がほんの小さな男の子に見える。それはやっぱりちょっと違うでしょと思った。
「中国版」は寂しすぎる気がしたのだけれど、今はそれでいいんじゃないかと思っている。
「ロシア版」は日本の作家による小説だと言うことをアピールしたいだけに思えた。今はあれは「図書館」なのかもしれないとも考えるけれど、でもやっぱりただの寺に見える。そして「寺」が小説の内容上、何らかの重要性を持っているとは思えない。
「ドイツ版」は猫の目が恐いなぁと思う。インテリアとか芸術系の写真集を連想させる表紙だ。でもこれが過半数を超える支持を集めているのだから……、わたしには表紙選びの才能が欠如しているということがよく分かる。編集さん(表紙選びには参加しないか)とかにはとてもなれそうにない。 

村上モトクラシ大調査】2・「これをあげるよ」と気前よく言われたとします。どちらを選びますか?『1973年のピンボール』の、3フリッパーのスペースシップ(伝説のピンボール・マシン)か、「トニー滝谷」の洋服全部(一日2着着ても全部着るのに2年かかる)。
[女性]スペースシップ 262
[男性]スペースシップ 420
[女性]洋服 167
[男性]洋服 151

 これは自信をもって「洋服」が多数派になると予想。少なくとも女性に関しては。――でも見事に裏切られる。何なのだいったい! スペースシップなんて場所をとるしすごぉく邪魔じゃないですか? あんなのは養鶏場にでも置いとくしかないのだ! ――だけど考えてみれば洋服全部も相当に邪魔である。広い空き部屋がひとつは絶対に必要である。……でもスペース的問題は「トニー滝谷の洋服」に関して言えばまるで気にならない。
 わたしは絶望的に退屈で寝ることも出来ないという状況にあるならともかく、自ら進んで「スペースシップ」なんてやりたいとは思わないのだ。「伝説のピンボール・マシン」なのだから目の前にあれば少しはやると思うけれど、それだけなのだ。ちっとも心惹かれない。だけど「トニー滝谷の洋服」! わたしは「トニー滝谷」を読んだ時からすごくその洋服を欲しかったのだ。まさに“Dreams come true.”である。
 わたしは背も低いし「すらりと」洋服を着こなすことは出来ない。でも洋服のことを考えるのはすごく好きだし、幸せな気持ちになることが出来る。そして手に入らなかった洋服のことを何年も憶えている。衣装が気に入ってそれだけを楽しみに映画やドラマを見る。そういう映画の出来はうまく評価(普段だって難しいのに)することが出来ない。だから洋服に魅せられてしまった彼女の気持ちが分かるような気がするのだ。
 サイズ7で、慎重160㎝前後というのはわたしのジャストサイズではない。でも後数キロ体重を落とすくらいは「トニー滝谷の洋服」を着るためならたいした苦労であるようにも思われない。千着以上の洋服に順に袖を通し、鏡の前に立つ。明らかに似合わない服は売り(そういう換金性からいってもスペースシップよりいいような気がするのだけど、どうなんだろう?)、そのお金で服をジャストフィットするように直す。そう想像しているだけですごく楽しい気持ちになる。

 「村上春樹作品の言い間違い」もなるほど、という感じがして面白かった。わたしもそんな感じの勘違いなんかは幾つもしてそうだけど、今回は思い出せなかった。残念。