「映画の日」は映画館で

 映画は小さなテレビ画面で観るのに比べると、映画館の巨大なスクリーンで観たほうが大体に置いて五割り増しぐらいは面白く感じる。映像の迫力を売りにしているようなのだと、七割り増しくらいは素晴らしく感じられる。そうじゃなきゃ誰もわざわざ映画館に足を運んだりはしない。最近の映画館はシートもゆったりとしていて前の人の頭が邪魔になるようなこともない。音響も臨場感たっぷりである。
 だから本当はお気軽に映画館に通いたいところなのだけれど、大人が通常料金で千八百円というのはちょっと高すぎるように思う。正直そんな値段で映画を観た記憶は無いけど……。これがもし八百円くらいで観られるとしたら、お買い物のついでにとか軽い時間潰しにだとか……、喫茶店で雨宿りするような気安さで映画館に寄ることが出来るのにな、と思う。そういう生活はすごく魅力的だ。
 だけど残念ながら現実は厳しいので、映画の日とレディース・ディを狙って行くことになる。今日は「映画の日(ファースト・ディ)」と母の仕事の休みが運良く重なったので、二人で映画館へ行く。話題になっているようなので何となく『宇宙戦争』を選択する。迫力勝負の映画みたいだし――。
 以下は簡単な感想。観る前にはあらゆる種類の予断を抱きたくない! という人は読まないで下さいね。
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 わたしが粗筋もろくにチェックしないで観に行ったからだと思うけれど、「戦争」というタイトルから想像するのと違って、映画の中で人類は地球外の知的生命体による一方的攻撃を受けていた。 One-sided game. 戦争というよりは「侵略」である。
 そして主人公のトム・クルーズが主体的に地球の未来を護るために立ち上がる――わけではないところがこの映画の新しい視点であり、独自の存在意義を与えているポイントである。彼はヒーローではなく、戦う手段を持たない無力な一市民に過ぎない。――なのに世界が一晩でひっくり返っちゃうような目に遭ってしまったのだから――ほんとに参ちゃうよな、と思う。そんな時はよく分からないうちに死んじゃうのが何といっても一番である。そして不幸にも人類滅亡の危機に現在進行形で関わることになってしまったトム・クルーズは、誰もがそうであるようにすごく混乱するしすっかり参ってしまう。自然なごく当たり前の反応である。結局彼は、愛する娘と共に生き残ることだけを目標に行動する。そこには高邁な思想も見栄えの良い正義感も何も無い。だけど、その分だけ彼の抱える恐怖がリアルに感じられる。とても怖ろしい。彼の十歳になる娘はひどい悲鳴を繰り返し挙げていた(きっとあの見事な叫びっぷりを評価されて娘役を得たんじゃないかと思う)けれど、彼女と一緒にわたしも叫びたかった。せっかく生き残れたとしても、わたしならすぐに頭がおかしくなっちゃうに違いない。
 そんなわけでこれは最後までドキドキを維持してくれる映画でした。割にあっけないエンディングだったけれど。でもそうでもなきゃ、恐くてひとりで真夜中のトイレに行けなくなったかもね。