毛布を持って映画館へ行こう

 映画館のエアコン設定温度が何度なのかは知らないけれど、昨日は本編が始まる前から(だいたい二十分も広告するのは長すぎる)寒くて仕方がなかった。一応は用心して薄いカーディガンを持って行っていたのに、そんなのじゃ到底かないっこなかった。最近わたしはひどい運動不足だし、筋肉量が少ないのが大きな問題なのかもしれないけれど……。でもあれはやっぱり寒すぎるよな、と思う。ジーンズとサンダルとの僅かな隙間から冷気がすうっと流れ込んできて、冬の駅前で待ちぼうけをくらった人みたいにすっかり凍えてしまった。ノースリーブにスカート、サンダル履き、と言うのが考え得る最悪の服装である。デート向けのコーディネートは決して映画館向けではない。デートで映画を観に行こうと思っている女の子は、あまり気合いを入れすぎないように注意した方が良いです。あるいは厚手の毛布か何かを持ち物に加えるように。余計なお世話だろうけど、――老婆心ながら。その点わたしは気楽なもんである。少し悲しい気もするけど、せっかく映画館まで出かけてひどい思いなんてしたくはない。
 昨日の客席は平日の昼間にしては割に埋まっていた方だと思う。何といっても映画の日だったし、スティーヴン・スピルバーグトム・クルーズがコンビを組んだ映画なのだから。だけど広い映画館の半分くらいは空席だったから、人の熱気で中の温度を上げることは出来なかった。がたがた震えている人は見なかったけれど、映画の終盤からやたらと席を立つ人が目立った。映画の鑑賞にポップコーンとコーラは欠かせないというタイプの人は、きっと激しい尿意に襲われたことだろうと同情する。でもお陰で字幕を読む邪魔にはなるし、気は散るしで少し迷惑だった。映画館としてはエアコンの設定をこまめに調節するか、コールド・ドリンクの販売を自粛するくらいのことはして欲しい。
 だけど結局のところ、映画館のサービスとしてはエアコンの設定温度を低めにしておくのが無難なところなのだと思う。もし客に暑いっていわれたら格好がつかないものね、電気代をケチってるみたいで。