コインランドリー

 今朝も雨が降っていたし、明日も雨が降るらしい……。とにかく梅雨なのだ。洗濯物がからっと気持ちよく乾いてくれない。――そうだ、コインランドリーに行こう! と重い腰をようやく上げ、洗濯機を三回まわし、ゴミ袋二つ分の洗濯物を担いで車に乗った。
 部屋干しすれば片付くのに軽く三日はかかりそうな洗濯物の山も、布団もオッケーな巨大乾燥機ならものの三十分でふかふかのほかほかである。『野菊の墓』に目を遣り(あまりコインランドリーに相応しい小説ではないみたいだ)、母とお喋りしているうちにちょっとした憂鬱の種は暖かな風に吹き飛ばされてしまった。
 まだ熱のある洗濯物たちを大きな台に広げ、畳んでいく。すごく幸せな気持ちになる。ひどく草臥れた身体をひんやりとした海から引きずり出し、トボトボとパラソルの下まで太陽の温もりを残した砂浜を歩いてようやく柔らかなタオルにくるまれたみたいに。

野菊の墓 (集英社文庫)

野菊の墓 (集英社文庫)