ハルキとソーセキ

 きっと誰も憶えていないだろうけど、柚木は前に「村上春樹の小説と夏目漱石の小説との読後感がすごく似ているように感じる」というようなことを書いてました。(良かったら読んでみて下さい。 教科書の中の『こころ』 - 雨天炎天な日々)。それはわたしが高校生の頃から(もうだいぶ前ですね)ずっと抱えていた個人的な感想なのだけれど、自分でもどうしてそんな風に感じるのかうまく説明がつかなかったんです。別に説明する必要なんてないんだと思うけど。
 とにかく、わたしはそういう「もやっとした不透明な感想を胸に仕舞いながら春樹さんの本を読み続けていたわけです。そしたら昨日、図書館から借りた『少年カフカ』をパラパラッと読んでいて、少しにんまりしちゃう春樹さんの文章に出合っちゃいました。

 僕の文体にとって大事な要素を三つあげてくれといわれたら、僕は「音楽性」と「ユーモア(おかしみ)」と「親切心」と答えると思います。日本の作家でいちばんシンパシーのようなものを感じるのはやはり夏目漱石です。彼の文章には、その三つが備わっているように見えるからです。
   『少年カフカ』 Reply to 766 より

少年カフカ

少年カフカ

 
 そうか、春樹さんて夏目漱石が好きだったんだ! (村上春樹ファンには常識なのかもしれないけど、わたしはちっとも知らなかった)。でもそうするとわたしの抱いた感想もあながち的を外していたわけでもないんだなぁ、と思ってにんまりなわけです。もちろん小説を読んで抱く感想なんてとても個人的なものだし、何が正解かなんてなんの意味も持たないことだとは思うけれど、この文章を読んで胸の中の「もやっ」が少し晴れた気がするのも事実です。例えるなら、ガリガリ君ソーダ味)で当たり棒を引き当てた感じかな。……いや、まだ当たりを引き当てたことないから確かなことは言えないんですけど。