春樹さん走る

 毎週火曜日はモトクラシ大調査の日。
 でも今回の火曜日はなんとなく落ち着かなかった。アメリカで甚大な被害をもたらしたカトリーナ以上の勢力を持った台風14号が、近畿に接近中だったのだ。外は木をなぎ倒そうと暴力的な風が吹き荒れている。でも柚木はこんな嵐の日に、少し遅れた誕生日プレゼントを持って友達の家に行かなくてはならなかった。次の日には彼女はスイスへと旅立ってしまうのだから、この約束は絶対である。
 結局この日近畿地方は台風14号の直撃を免れ、柚木は旦那さんの車で無事に友達の家に行くことが出来た。「準備があるから、夜のほうが落ち着くし」という彼女の言葉を受けて、家に着いたのは夜の八時前である。でもちっとも「落ち着いて」なんてなかった。つい二日前に寄った時はきれいに片付いていた家の中は、嵐が吹き抜けた後みたいに荷物が散乱している。
 わたしと旦那さんが彼女のお母さんから美味しい手巻き寿司をご馳走になっている間も、彼女は荷物の整理や電話の応対にうろうろして落ち着かなかった。どうしてスイスに引っ越す前日に郵便局に郵送方法を訊きに行き、荷造りを始めるのか? わたしも相当のんびりした人間だけれど、これはちょっと分からない。きっと世界は、わたしが思っているよりずっと狭くなったということなのだろう。徹夜で荷造りして、なんとか飛行機にだけは乗れたみたいだから、彼女はきっと反省なんかしてないだろうと思う。
 そんなわけで村上モトクラシをチェックしたのは、日付が変わる直前だった。「もうモトクラシ大調査には間に合わないかも……」と半ば諦めていたのに、そんなわたしの目に飛び込んできたのは春樹さんからのメッセージ! ([ http://d.hatena.ne.jp/motokurashi/20050906 ])。こういうのって二重にうれしい。
 春樹さんは「走る小説家」として『ランナーズ・ワールド』のインタビューを受けるに相応しく、ずいぶん真面目に走り込んでおられるそうです。(でも週に80キロってちょっとすごいですよね?)。これだけ走って、仕事もして……。あまりのバイタリティに、柚木は短い舌をぐるんぐるんと巻いてしまいます。わたしなんてちょっとお出かけしたくらいで、こんな何でもないブログでさえ書く気力をあっさりなくしてしまうって言うのに。はぁ〜あ。(春樹さんと比べてみる方が悪いんですけどね)。
 春樹さんは『「ローリング・ロック」と「バース・エール」が、なんと言っても口飲みがおいしいビールの双璧』だとおっしゃってますが、わたしはほとんどビールの口飲みってしたことないです。映画なんかで見るとお洒落な感じもするけれど、グラスに注いで飲むのが一番落ち着きます。上品な清水焼の素焼きグラスを手に入れてからは、それにビールを注ぐのが本当に楽しみで、余計口飲みからは遠ざかっています。きめの細かいきれいな泡が立つんですよ、ほんとに。