夏休みの思い出 バスツアー上高地

 お盆休みに上高地と軽井沢を巡るバスツアーに出かけた。お義母さんが予約してくれたのだ。直前にお義父さんが参加すると知って少し驚く。お義父さんとバスツアーってなんだか似合わないんだもの、勝手に参加しないものと思い込んでいたのだ。
 安さが売りのバスツアーは、小ぶりなバスに4列シートという窮屈さ。旦那さんとお義父さんが並んで座ってみると、あまりの狭っ苦しさにこっちの息が詰まったので、優しく席を替わってあげることにする。旅行中、柚木はお義父さんのお隣である。
 ゆっくり波紋のひろがる湖面に映したみたいに、お義父さんと旦那さんはそっくりな性格をしている。かなりクセのある性格なのだけれど、気を遣ってくれる分だけ、お義父さんの隣に座ってるほうがずっと快適。
 折り詰めみたいなバスを降り、上高地を散策する。空はよく晴れていて、遠くの山まできれいに見える。深い青緑に光る梓川に沿って、遊歩道が続いている。木立の中をひんやりとした風が流れる。
 川に向かって石を投げてみた。柚木の石はなかなか跳ねない。先に何度も3回飛びを成功させていた息子が、小さくて平べったい石をこれがいいと渡してくれた。その石でわたしは生まれて初めて石を跳ねさせた。石は川に流されて不規則に飛び跳ねる。ピョンピョンピョンと3回。――でも成功したのは、その一回だけ。