お寿司は回る 下

 だらだら20分ほど歩いて、ちょうど開店時間の11時に目的地「くら寿司」へ到着。開店直後だというのに、カウンター席には年配の男性客の姿が数人、テーブル席には家族連れの姿も見える。
 子供たちの興奮は絶頂に達している。甲高い声が広い店内に響き渡る。ぎゃーぎゃーとお水を取りに行き、ぞろぞろとトイレに行く。タッチパネルを操作して、好きなお寿司を注文する。わさび入りを押すふりをしてふざける。ふざけすぎてお水をこぼした。それでまた騒ぐ。
 昼前には店内はいっぱいになった。「くら寿司」はとっても人気があるのだ。子供たちの騒動も、店内のざわめきに紛れてくれる。
 男の子たちは好きなものをどんどん注文していく。女の子たちは圧倒されているのかもともとが小食なのか、なかなか手を伸ばさない。息子はいつものように玉子を4皿食べ、最後に甘エビを頼んだ。
 男の子4人はぶわぁーっと怒濤のように食べた。どんどん頼んで、どんどん食べる。そして「さあ帰ろうぜ」、とあっさり言い始めた。せっかくみんなで来たんだから、ちょっとゆっくりデザートでも食べながら……ってことは思いもしないみたいだ。「帰ろうぜ」の合唱が始まってから注文していたマグロが流れて来た男の子は、「早く、早く」の声に押され、むせそうな勢いで次々口に詰め込んでいた。
 でも、どうして急ぐ必要があるんだろう? 時間はたっぷりあるのに。ほんとうによく分からない。
 みんな大事にお財布を取り出し、机に自分が食べた分のお金を置いていく。女の子たちは消費税を気にして、一生懸命計算している。でも男どもに彼女たちの言葉はまるで届かないのか、食べたお皿の数だけ、ころころと100円玉を渡してくれる。もしかしたら彼らは、消費税というものの存在を知らないのかもしれない。
――この年頃の男女差って、ほんとにすごい。それはもう自転車と三輪車くらいは違う。
 ふふふ、と思いながら消費税分はわたしが奢ってあげた。大人だからね。でも、それを分かっているのは女の子2人だけなのだ。