半ケツの王子

 去年の今頃は仕事中暇を持て余せていたというのに、今は当たり前に朝からピシピシ働いて、残業なんかもしている。2時間残業してようやく職員と同じだけの勤務時間になるわけだけれど、終了時刻からの延長はまた別物だと思う。しっかりと残業代はいただくものの、時間内に仕事が終わらない自分の効率の悪さを顕わにされているような気がしてあまり気分がよくない。
 職場環境を考えると、大学という場所は普通の企業お勤めに比べればぬるま湯に浸かって紅葉を眺めているようなものなのだろうと思う。コスト意識は高くないし、頭のおかしなクレーマーが押しかけてくることもない。なのに今の仕事相手とは始めにひどくトラブってしまって、随分と胃の痛い思いをした。決して悪い人ではないのだけれど、理系の研究員さんには珍しく時々ひどく高圧的な態度に出るので、小心者で負けん気の強いわたしとはそりが合わないのだ。自分の態度の悪さをいたく反省し随分と関係が改善した今も、仕事がうまく流れていないように感じる。仕事のストレスのほとんどはおそらく人間関係に起因しているのだな、と胃を痛めつつお菓子の詰まった引き出しを開ける。
 ようやく訪れる週末には活動的に動き回った夏の反動みたいにじっと家に閉じ籠もり、平日の睡眠不足を補うために惰眠を貪っている。わたしはストレスがあると外界に出かけていくのではなく内に閉じ籠もるタイプの人間なのだ。昼頃ごそごそ起き出しては、布団にくるまりながら本を読む。最近はカズオ・イシグロの「わたしを離さないで」とハリーポッターシリーズの「Half Blood Prince」を読んだ。結果としては気分の沈んだ時に、重たい話を続けて読むことになった。そういうのはあまりよくない気もするのだけれど、どうなんだろう? ハリーポッターの本はずいぶん前に友達がくれたもので、英語本多読の原則にきわめて忠実に従い、辞書を引かずに布団に転がりながら想像力を駆使して読み切った。日本語版を図書館で予約してみたけれど、実は全く違う話だったということもありうる。ああ恐ろしい。
 しかし Half Blood Prince の邦題は「謎のプリンス」なんですね。勝手に「半血(はんけつ)の王子」ってタイトルを思い浮かべて、なんだかクレヨンしんちゃんを強く連想させるな、それってちょっとまずいよねー、と思っていたのに。つまらないの。