お引越し

 つい先週お引越しをした。といっても職場の話。耐震強度驚異の3割から奇跡の復活を遂げたお隣の建物へ、今の秘書部室から分離独立し、ドナドナドナとふたりぼっちで連れて行かれてしまったわけなのです。わたしたちふたりの他は、同じ建物に研究職の方ばかり。談話室の片隅に設けられた秘書室は、賑やかだけれど孤独でもあります。ああ帰りたい。
 まだ壁掛け時計も床に転がってる状態で、落ち着いたとは口が裂けても言えっこない。いくら隣の建物への移動とはいえ、引越しには必然的に煩雑な事務的作業が数多く発生するのだ。そういう諸々の厄介ごとを処理する責任者は、ここが大学の研究所である以上、当然教授ということになる。先生方というのは研究だけしているんじゃないのだ。(それはここで働いてみて始めて知った。)みな研究者として一流であることは間違いないのだろうけれど、そのことは事務方面の能力を保証するものではない。そして今回は誠に残念な結果となった。
 「引越してみないことには。私は何も……」というのが、リーダー(教授)の切り札だった。その曖昧なお導きのもと、先週初め、お引越しは混乱のうちに一応終了した。引越しの予定時間は当日になっても知らされず、前日全ての梱包を済ませていたわたしたちの荷物は、夕方最後に運び出された。部屋の電話はつながらなかったし、注文していたキャビネットなどの納入日は誰に訊いてもはっきりしなかった。部屋の電気容量は電気ポットと電子レンジとプリンターの分にも足りていない。ウォシュレット付きの美しいトイレにはサニタリーボックスがついていない。6月搬入予定と聞いていたプリンターは、発注されていなかった。学生さんたちは誰がどの部屋に入ったのかすら知らず、談話室がセミナールームに変更されていたってことは、わたしが教えてあげたのだ。
 そんなわけで、まだ当面ゴタゴタは続きそうです。なんでわたしがこんなことまで心配を、と思う時もありますが、確かに役に立ってるぜ、と勝手に満足することも出来ます。やれやれ。