神の国に行く

touko_yuzu2008-09-02


もう9月になってしまったけれど、8月始めのバスツアーの思い出について書く。8月の最終週からすでに小学校は始まっているし、ほんの一月前のことなのに、ずいぶん遠い思い出になってしまった。
8月始めのある暑い日、母と親子三人、島根県出雲大社に行ってきた。59年ぶりの御本殿特別拝観開催の年にあたっていたのは、なかなかラッキーだった。お陰さまでバスも出雲大社も、とても混んで窮屈だったけれど。
特別拝観用にあらかじめ整理券が配布され、指定時間内に着かなければ中に入ることができない。神様のご住居にお邪魔するのだから、服装規定だって守らなくてはいけない。お酒を飲んでいてもいけない。結構厳しいのだ。バスは休憩時間もそこそこに、島根までひた走る。旧式の小さな観光バスにきゅっと押し込められて、お尻がかちこちになった。京都と島根ってずいぶんと離れている。
ようやくたどり着いた出雲大社は、思ったよりもずっと小さかった。本殿前の白い巨大なテントの下で順番を待ち、ぞろぞろと神様のお住まいを覗かせていただく。神様は意外と質素なお方であった。その分余計に本殿天井に描かれた秘図「八雲の絵」の色彩の鮮やかさが不思議で、魅力的だった。濁りのない赤や紫、緑や青で彩色された七つの雲は、つい昨日描き上げたかのようにほんの少しも色褪せてはいない。絵は延享元(1744)年の造営遷宮に際して描かれたそうなので、なんと264年間もそこにあるのだ。誰かこそっと塗り直したんじゃないの、と神の膝元でつい疑り深く呟いてしまった。
御本殿を出ようとした時、降り出していた雨が急に激しくなった。雨が石畳を叩き、白く弾け飛ぶ。わたしたちはしばらく神様の家に閉じ込められた。出雲大社の拝観は、大雨により一時中断される。バスツアーの客は出発時間を思ってやきもきするだろうけれど、神に使える方たちは物事をゆったりとお考えになる。自分達の拝観は無事終わっているので、わたしもそのゆったりとした考えに賛同する。なんせ傘なんて役に立たないくらいの立派な降りようなのだ。(でもなかなか止まなかったので、結局は途中で抜け出て濡れてしまった)
出雲大社楽殿には、長さ13m、太さ8m重さ5トンという実に巨大な注連縄がある。願いが叶うと言われ、息子さんはせっせとこの注連縄に向かって10円玉を投げた。突き刺さった数だけ願いが叶うといいね、ほんとに。
夜は松江泊。宿からぶらぶら歩いて松江城を見学。美味しいお刺身を食べ、ビールを飲む。次の日は世界遺産に登録された岩見銀山を見学。江戸時代の炭鉱堀が暗闇の中長い坑道を掘り進んだのかと思うと、その苦労に切なくなった。他は特に記すべきこともない。
長い京都への帰り道で、旦那さんは大変気分が悪くなった。狭い座席に詰め込まれていたせいで、エコノミー症候群みたいになったのだ。旦那さんはもう二度とバスツアーには行かないと言っている。足が長くても、世の中得することばかりではないですね。